SSブログ

映画『レスラー』、観てきました。 [プロレス]

ninaさんに「観た方がいいよ、もうすぐ上映終わるよ」と教えてもらったので、
前々から観るかどうか迷っていた映画『レスラー』を観てきました。
tohocinemas.jpg
プロレスファンの間では去年アメリカで上映される前から、CZWやROHといった
一般的にはあまりなじみのないプロレス団体や、米国インディーマットの選手らが
多数出演していることで結構話題だったんですが、主演のミッキー・ローク自身の
半生と主人公ランディ”ザ・ラム”ロビンソンの半生とがリンクしたせいか、
いつの間にかヴェネツィアで金獅子賞を獲ったりアカデミー賞にノミネートしたりと
なんだか一般層からも注目されそうなタイトルになって日本へ上陸。
その上、封切り当日からプロレスファンにとって悲しい出来事が立て続けに起こり、
元々悲哀に満ちたストーリーであることが判っていたので、ちょっと観に行く気も
なくなりかけていたのが正直なところでした。

で、観てどうかと言えば。
少なくとも楽しい映画ではありません。
ただ、映画でありながらザ・ラムというプロレスラーのドキュメントビデオを
観ているような感覚になってしまい、結局、ここ1ヶ月ほどでプロレス界に起こった
様々な出来事を思い返しながらスクリーンを眺めていました。
多分、今日同じ客席に座っていた人の大半とは全然違う見方をしていたんじゃ
ないかなあと思います。

以下、ネタバレとまではいきませんが雑感として作中の描写に触れていますので、
そういったものがダメな方は飛ばして下さい。

ミッキー・ロークについては、
「ナイン・ハーフで氷くわえてた人」とか「両国でネコパンチを披露した人」
くらいの印象しかなかったので、ローク演じる、というよりも実在のレスラーである
ザ・ラムの物語として観ることができました。
なので反面、よく言われるような「ロークとザ・ラムの姿が重なって」というのが
今ひとつピンとこなかったり。

ザ・ラムの最盛期についても、冒頭のナレーションと新聞記事、劇中出てくる
ファミコン(NES)のソフトくらいしかそれを偲ばせるものがなくて、ちょっと
判りづらいなあ、と。
80年代なら間違いなくビデオはあるし、その頃アメリカで人気のレスラーが
日本で試合をしてない訳がないんだけど。

物語中盤、ザ・ラムと凶器デスマッチで対戦したネクロ・ブッチャーは現役の
プロレスラーです。たまに日本にも来て試合してます。
ザ・ラムの方はどうだか判りませんが、少なくともネクロの方に関して言えば
ホチキスは間違いなく実際に身体に刺してます。
なぜかというと、あの人はいつもあんな試合ばかりしてるので。
というより普段はもっととんでもないアイテム使ってますね。
試合ラストのテーブルダイブでその片鱗を見せた通り、とにかくやられっぷりが
ものすごい人です。
更に言えば普段の試合用コスチュームはもっとボロボロで貧相。
伊達に日本で「バカガイジン」と呼ばれてません。

ネクロと同様、現役レスラーの一人としてナイジェル・マッギネスも出演。
でも試合はしてなかったかな?なんか車買うとかなんとか、棒立ちで二言三言
喋ってただけのような。
この人は日本ではノアのリングに上がってます。結構ダイナミックな実力派。
ネクロと違い、至って普通の試合をします。

往年の人気レスラー達が公民館みたいな所に集まってサイン会やグッズ販売を
行う、というシーンはアメリカでも日本でも割とよくある光景です。
小さい会場だと試合の合間の休憩中にやってたりします。
インスタントカメラで2ショット1枚1000円とか、サイン1枚1000円とか。
これもなかなか経済的に厳しいレスラー達にとっては、貴重な収入源です。
でも、あのみんなが机の上にグッズ並べてぽつぽつとしか来ない客を待つ様子は、
どっちかというと同人イベントの一角を思い起こさせて、なんとも言えない気分に。

意外と女性客、それも1人だけとか2人組とかの方が多かった上映回でした。
金獅子賞だのアカデミーノミネートだのの謳い文句が影響したんだろうか?
ちなみに物語の1/4はストリップバーが舞台です(R-15指定作品)。
クスリきめて踊り子の姉ちゃんとトイレでシングルマッチ、なんてシーンも。
変にこっちの方が気を遣ってしまう・・・。

終盤、会場入りしたザ・ラムが対戦相手と話をした時、相手が
「Only I'm heel, and you're face.」(多少語句が抜けてるかも)
と言ってお互い苦笑する、というシーンがありますが、このセリフが字幕だと
「俺(対戦相手)がかかとでお前の顔を蹴るだけだ」
と訳されていました。
これ、完璧な誤訳です。
プロレス用語でヒールは悪役、フェイス(ベビーフェイス)は善玉なんですが
どうやら字幕担当の方はそれを知らなかったご様子。まあ無理もないですが。
なのでまあそれっぽく訳すなら、
「俺が悪者、お前がヒーロー、それだけだ」
って感じでしょうか。

結局ザ・ラムの必殺技「ラム・ジャム」ってダイビング・ヘッドバッドなのかな?
決めているシーンがあまり良く映ってなくて、ヘッドバッドなのかエルボーなのか、
はたまたボディプレスなのかいまいち判らず。

ラストシーン、ザ・ラムの異常に気づいたか気づかないのか、観客達は一斉に
「ラム・ジャム!ラム・ジャム!」とコールを繰り返して彼がコーナーポストに
登るよう声援を送ります。
ザ・ラムはそれに応えて必殺技を繰り出す訳ですが・・・。
「そんなことになるなんて思いもしなかった。あの人なら大丈夫だと思っていた」
というのは、3週間前に何度も頭の中で繰り返された言葉です。
ファンって一体何なんだろう。応援しているってどういうことなんだろう。
そんなことを少しだけ考えながら映画館を出ました。

多分、DVDが出ても買わないだろうなと思います。
それはこの映画がつまらないからじゃなくて、もっと別の理由ですね。
観て良かった、とは言えないけど、観ておくべき映画だったかな、とは感じました。
コメント(4)  トラックバック(0) 

コメント 4

benoit

なんかレビューを読ませてもらっただけで、悲しくなってきてしまった。
特に、ダイビング・ヘッドバッドやダイビング・ボディプレスがフェイバリット・ホールドというのが…カナダのあの人や、エルパソのあの人を思い起こさせてしまいますよね。
でも、そんな中
>Only I'm heel, and you're face.
の誤訳は、逆にクスリとさせられて、ガス抜きになるかも?
sould outとか4 Realなんかも誤訳されちゃいそうですよね。少なくとも、ロック様のトークは翻訳出来なさそう。シュトゥルーデルとかww
by benoit (2009-07-08 10:01) 

しゃけ

>>benoitさん
やはり向こうの作品なので、日本マットよりアメリカマットでの出来事を
強く連想させますね。オーエン・ハートと重ねる人もいるようです。

日本語訳はいっそのことルミエールの協力を仰いだ方がいいような?
最近のWWEではあまりマイクを武器にする選手がいないせいか、
以前のような特徴的な訳が出てきません。
「ロック様の妙技を味わえ!」「ストーンコールドかく語りきよ!」なんかは
今でもポンと出てくるくらいの名台詞ですが、それが今はないというのも
寂しい話ですね。
by しゃけ (2009-07-09 01:40) 

zebra

はじめまして しゃけさん

友達とDVDでみました。レスラー人生もピークを過ぎ、娘とは絶縁状態、ステロイドの影響で心臓は弱っているありさまの中年レスラー ランディー。娘との約束すっぽかすのは さすがにマズイよ~(´Ц`)

自分には「この場所しかない」不器用な生き方しかできないランディーは やはり 悲しい男です。

>「両国でネコパンチを披露した人」

セクシー俳優として80年代は全盛期だったのに ボクシングのために自分から全盛期を捨てちゃって・・・半ばバカだと思いましたよ。

 ロークは'88年に「ホームボーイ」というアメリカを渡り歩く流れ者のボクサーのジョニーを演じています。ランディとはまた違った不器用さをジョニーには あります。
ボクシングはスクリーンの中だけにしておけばよかったんだと思いますがいかがでしょうか

ただ、「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ふたつの作品を比べて見るのも悪くないですよ。


by zebra (2011-11-05 22:22) 

しゃけ

>>zebraさん
こちらこそはじめまして、コメントありがとうございます。
「レスラー」以後のミッキー・ロークは俳優としての評価を
取り戻したようで、先日はチャイニーズ・シアターに手形を
残して話題になっていましたね。
人間、どこで復活を遂げるかわからないものだなあと思いました。

「ホーム・ボーイ」、この映画は知りませんでした。
今度観てみようと思います。
そういえば「レスラー」の監督は「ブラック・スワン」でも同様に
不器用でひとつの世界にしか生きられない主人公を描いて
話題になっていました。こっちも観ないと…。
by しゃけ (2011-11-06 22:18) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。