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逆襲のシングルプレイヤー。【iriver Astell&Kern AK100】 [音楽プレイヤー]

※2012/11/20 ファームウェアV1.13適用による追記あり

まずは、ちょこっと昔話を。

世界で初めてデジタル音楽プレイヤーを発売したメーカーはiPodのAppleでも
WalkmanのSONYでもありませんでした。
以前にも書いたことがあるんですが、1998年に韓国のセハン情報システムから
発売された「mpman」というプレイヤーが世界初の”MP3プレイヤー”です。
その後いろんなメーカーから同様の製品が発売されていくわけですが、それらの
プレイヤーはほとんどが海外製、特に韓国メーカーの製品が中心でした。
その中でも、当時はまだメモリ・HDDが高価だったため”最も容量がかせげる手段”
として「ポータブルCD型のMP3プレイヤー」(CD-RにMP3データを焼いて再生する)を
発売、一躍有名になったメーカーがiriver(その頃はiRiver表記)です。
しゃけも当時の代表モデル「SP250」(RioブランドへのOEMモデルでした)に、
有志による改造ファームウェアを入れたりして楽しんでいたものです。
その後、iPodやWalkmanが登場し、これらのメーカー製MP3プレイヤーはすっかり
姿を消すことになるんですが、iriverもその例に漏れず細々と低価格モデルを
ひっそり出すような感じに。
そんなiriverが、数年振りに気合いの入ったプレイヤーを出してくれました。
ak100_01.jpg
Astell&Kern AK100です。
WAV,FLAC,APE,MP3,WMA,OGGと対応フォーマットが豊富なのと、WAV,FLACについては
24bit/192kHzのいわゆるハイレゾ再生可能、光出力搭載、microSDスロットを2つ
用意したことで合計96GBまで拡張可能となかなか面白そうなプレイヤー。
個人的にも最近ハイレゾ配信が気になっていたこと、常用しているiPod classicの
未来がまったく明るくないことなどもあって、手を出してみました。

まずは外観・操作性など。
サイズ的にはかなりコンパクトで、ちょうど第3世代の時のiPod nanoと同じくらい。
(といっても今わかる人少ないんじゃないだろうか…)
厚みは1.5cmくらいで重さもそこそこありますが、ポケットにぽんと放り込んで
使うのにも困らない程度です。
画面サイズはiPod classicとほぼ同じ。なのでclassic用保護フィルムも使えます。
AK100の操作は基本的にタッチパネルで行います。操作感もそれほど重くなく、
さすがにiPhoneレベルとまではいきませんが、ストレスなく操作可能。
本体右についているのはボリュームノブ。
クリック感はあるものの軽く回るので、聴いている最中に何かの拍子にいきなり
音量が上がってしまうのでは?という不安もありましたが、実際はロック機能
(画面表示が消えている最中はボリュームが無効になる)があるので問題ありません。
ついでに言うと、一度ノブを動かしてボリューム操作表示にするとタッチパネルでも
音量調節ができるので、おおざっぱなボリューム変更はタッチで、微調整はノブで、
なんて感じで使うことも可能。。
難をいえば、ノブが飛び出している分ちょうど収まるような保護ケースがなかなか
見つからない、というところですかね。
電源ONは本体上部の電源ボタン長押し。ただし、実際にはそこからシステム起動に
20秒ほどかかります。
ここはサッと使いたい時に気になる部分ではありますが、電源ONしてからイヤホンを
装着してたりすればだいたい起動完了している感じです。
ちなみに、電源ON時にイヤホン等をつないでいてもポップノイズは起きません。
(電源OFF時は小さく鳴りますが、気になるレベルではないと思います)
このあたりは地味ながらちょっと嬉しいポイント。
そうそう、本体にスピーカーは内蔵していないので、うっかり再生状態のままで
放置してしまうといつの間にかバッテリー切れを起こしているという悲劇も。
…はい、一度やりました。

再生中の表示系は曲名(右から左にスクロール)・アーティスト名・再生時間と
曲データに埋め込んであるアルバムアート。
ak100_03.jpg
そして、曲データのビットレート・サンプリングレートも表示されるあたりが
「ハイレゾ対応」を謳うプレイヤーらしさ。
日本語表示についてはおおむね問題ないんですが、漢字の部分がいわゆる
「中華フォント」です。具体的には「神」「海」「真」などの表示に違和感が。
ak100_02.jpg
(上の曲名は「1/2の話」なんですがこんな具合に表示されます)
この辺は以前から韓国製プレイヤーを知っていると「あーそうそう」という
お話ではあるんですが、やっぱり最近の製品レベルから考えるとちょっと残念。
また、アルバムアートについてもちょっと制限があるようで、例えばJPEG以外の
BMPやPNGといったフォーマットはファイルに埋め込んでも表示されないようです。
JPEGでも例えば1500×1500ドットなど、あまりサイズが大きいとNGの様子。

充電時はかなり熱を持ちます。一度うっかりケース(カメラ用のを流用)に入れた
状態で充電してしまったんですが、ちょっと不安になるくらい熱くなりました。
その後も問題なく使えているのでダメージはないと思いますが、一応充電時には
気をつけておくべきかと。

曲管理については基本的にフォルダ管理。
内部データベースでmicroSDカード2枚と本体メモリを区別なく管理できる、と
いうのが一応売りではあるんですが、正直そのキーとしているタグの読み込みに
若干問題があるようで…。
(アルバムアーティストの項目が悪さをしているという情報をいただきました)

※2012/11/20追記
11/19にリリースされたファームウェアV1.13で上記の問題は解消されました。
旧ファームウェアの時は
「どうせフォルダ管理してるからアルバムタグ読めなくてもいいかな」
と思っていたんですが、修正されてみるとやっぱり本体メモリとmicroSDの間を
いちいち行き来しなくてもアルバム指定ができるのは便利ですね。

プレイリストも本体操作で作成可能なのですが、これが「再生中の曲を1つづつ
追加していく」方式ということで、編集等は別途PC上から行う必要あり。
なので、おのずとフォルダで管理、指定して再生という形に落ち着きます。
ついでにいうと、電源を一度落とすととそれまでの状態を忘れてしまうという
ちょっと困った仕様も。
例えば、ある曲を再生していて、そこで電源OFF。
再度電源ONして再生するとその曲から始まりはしますが、次にかかる曲は
「同じフォルダ上の次の曲」でも「プレイリスト上の次の曲」でもなく、
「本体メモリ内のファイル名順で次の曲」というよくわからない状況が発生。
このあたりは今後のファームウェアアップデートでなんとかして欲しいところ。
特にタグ読み込みについては、iPod系から乗り換えを考えている人には結構な
壁になりそう。
AppleロスレスからのFLAC変換なんてソフトで簡単にできますが、操作感は
慣れだけで済ませられない部分もありますからね。

※2012/11/20追記
この「電源OFF問題」もV1.13で解消されました。
フォルダ内再生でもプレイリスト再生でも、電源OFF→ONしても以前の状況通り
再生されるようになりました。
これは使い勝手に関わる大きな問題だったので、飛躍的にプレイヤーとしての
完成度が高まった感じです。
…とはいえ、これでようやく普通のプレイヤー並みの使い勝手になった、とも
言えるのですがw

そうそう、ギャップレス再生は不可という点も人によっては残念かも。
CDの内容を1ファイルにまとめてCUEファイルで…という方式にも非対応でした。

続いて音質について。基本的にFLACファイルのみで確認しています。
デフォルトだとフラットで結構硬質、鮮明さがありメリハリも若干効いている感じ。
グライコもタッチパネルで直感的に操作できる…ようですが、個人的にグライコは
まったく使わない派なのでこの辺はパスw
低域も締まった感じで量的には多くはなく、すっきりしたクリアさがあります。
ホワイトノイズも特に感じられず、無音時に音量を上げても全然気になりません。
AK100特有の音のクセはあまりなく、ヘッドホンやイヤホン側の音がそのまま
現れる感じなので、そちらの比較試聴にはちょうど良いかも。
どうしても「ハイレゾ対応」という点が強調されがちですが、普通にCD音源モノを
再生しても充分音質の良さが感じ取れると思います。
ちなみに、ハイレゾ音源とCDからのエンコード音源の違いはちゃんと聴き分け可能。
(ってかそれができなきゃわざわざ対応させる意味がないけど)
一応それを確認するために、ノラ・ジョーンズの1stアルバム24bit/192kHz配信版を
買ってしまうところが我ながら悲しい習性だなあ。

ヘッドホン出力は若干パワーが足りないかな、という感じがあるので、能率の高い
ヘッドホンやイヤホンで使うのが良いかと思います。
例えばEtymotic Reseach ER-4SやSENNHEISER HD25-13あたりだとフルボリュームでも
ちょっと厳しいなあ、という印象です。
反面、元々鳴らしやすいFitEar MH334やaudio-technica ATH-ESW9等と組み合わせると
「ああ、もうこれでいいかな」というくらいのレベルはあるかと。
一応光出力も備えてはいますが、基本は「単体で使う」プレイヤーだと思います。
とはいえ、そろそろ外でヘッドホンを使いたくなる季節になってきたこともあるし、
やっぱりポータブルアンプと組み合わせられればなあ…という気持ちも。
ラインアウトがあればなあ、というのが仕様面で一番惜しい点でした。
まあヘッドホン出力からポータブルアンプにつなぐ、というのも可能ではあるけど
なんとなく負けた気がするので試してはいません(^^;)。

で、結局AK100どーなのよ?というところですが。
先に書いた通り、単体で使うことを考えればかなり有力なプレイヤーです。
音質的な面でいえば同じく単体完結タイプのiBasso HDP-R10やALTMANN Tera Playerに
譲るところはありますが、なにせこちらはその半分程度の価格。
それでいてHDP-R10より小さく、動作も軽い(最近は若干改善されたようですが)し、
Tera Playerにはない操作性の良さと対応フォーマットの幅広さ。
もちろんこれまで書き連ねたような「ここがもうちょっとなあ…」という点はいくつか
あるんですが、それも致命的なところまでは至っていない印象。
イヤホン派・ポータブルヘッドホン派(鳴らしやすい機種に限る)なら、一度は
試してみる価値がある機種じゃないかなあ、と思います。
マニア向け(だよね?)の機種として初めてリリースした製品にしては、なかなか
良いところを突いてきたなあ、というのが正直な感想。
発売後にも早速ファームウェアの更新がかかりましたし(現時点で最新はV1.12)、
着実により良いプレイヤーに仕上がっていく感じが嬉しいですね。

ハイレゾ音源についてはまだまだ「クラシック、ジャズ、昔の名盤の出し直しばかり」
という印象がぬぐえませんが、最近になってHDtracksなど海外配信サービスを中心に
「CD発売と同時にハイレゾ版配信もスタート」というところも増えてきましたし、
アーティストが直接、音源を販売できるbandcampというサービスも出てきました。
かく言う自分もある同人レーベルがbandcampでFLAC版配信を始めた、というのが
今回AK100に興味を持ったきっかけのひとつです。
いつもはCDで買うダイアナ・クラールの新譜も96kHz配信版を買っちゃいました。
ak100_04.jpg
(国内版CDの発売よりも早く、しかも安価に配信されていたということもありますが)
国内の音楽配信サービスもここにきて次々とDRM(いわゆるコピー制限)廃止を
打ち出し、ハイレゾとはいかないまでも高音質版としてサンプリングレートの高い
楽曲を配信し始めました。
なんとなく「あー、一応あるのは知ってるけど」的な感じでちょっと遠い存在だった
ハイレゾ音源が、かなり身近な時代になってきたのかなあと。
それらの音源、気合いを入れて据置機で楽しむのがそりゃ良いのかも知れませんが、
こんなに小さいプレイヤーでも手軽に楽しめるんだから、いい時代だなあ。
保証対象外ながらどうやら64GBのmicroSDカードも使用できるらしいので、そうすると
合計で160GBと、iPod classicに匹敵する容量に。
今後のファームウェアアップデートに期待できるし、もしかしたら有志による改造版も
出てくるのかな?という別の期待もあったりするので、わりと本気で自分のメイン使い
プレイヤーになるんじゃないかな、と思ってます。
…どっかが光入力・ミニプラグ出力のポータブルDAC、出してくれないかなあ。
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コメント 2

Knights-Fear_Rna-

 購入されたんですね。
 自分も、祭りで見てから、ちょっと欲しくなっていますが、CK4で廉く済ませようかと企んだり…(笑)
by Knights-Fear_Rna- (2012-11-14 16:07) 

しゃけ

>> Knights-Fear_Rna-さん
CK4もそこそこ触ってみたんですが、どうも対応ファイルのはずなのに
読み込めなかったり、動作が今ひとつ不安定だったりと常用するには
ちょっと…という感じでした。

とはいえ、AK100もこれまで3回ほどフリーズしましたけどねw
by しゃけ (2012-11-15 00:56) 

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